サブリース問題研究会

不動産サブリース契約にも借地借家法の適用があることを前提に、具体的な同法の適用場面において、不動産サブリース契約の特殊性がどの程度考慮されるべきかという点にあると思われます。消費者契約において普遍的な考えである[契約弱者]の概念を入れて法的支援が可能かを提言します。

提言内容
不動産サブリース契約において、賃借人からの期間内特約条項が記載されている場合、同条項の合理的解釈、ないし信義則の問題として、不動産サブリース契約の「衡平」論が考慮されるべきと考えられる。

不動産サブリース契約における「衡平」とは、
1.賃貸人の「当初収入予測に対する信頼」
2.「当初収支予測に基づく多額の資本投下」をその議論の中心に位置付けるべきであると考える。
3.賃料相場の下落は原則として賃貸人が信頼した当初予測を損なわない限りで考慮されるにすぎ ない。賃貸人の当初収入予想に反するサブリース業者の早期撤退は、同条項にかかわらず衡平の見地に照らし否定すべき場合がありうると考えられる。

不動産サブリース契約を巡って多くのトラブル事例が発生していることをふまえれば、契約弱者たる賃貸人の保護規定を整備することは喫緊の課題である。
この場合、第一に、不動産サブリース契約の締結段階において、専門業者らが賃貸人となる者に対し、どのような説明義務を負うか、また適合性原則等のその他の規範に服するかが重要な論点である。
第二に、不動産サブリース契約締結後、契約の履行、解消段階において、どのような規律が適切かについて、検討していく必要がある。

消費者保護や不動産契約等に関する現行規制のもとでの適用可能性を検討するとともに、不動産サブリース契約における賃貸人保護規定の提案を行う。
1.賃貸住宅管理業者登録制度
2.消費者契約法
3.特定商取引法
4.借地借家法
5.賃貸住宅管理業法

これらの保護規定を立法措置で講じると、以下のようになる。
(1)賃貸住宅管理主任者登録制度、サブリース業者のオーナーに対する営業保証金制度を含む義務的登録制度
(2)不実告知・重要事項の不告知、断片的判断提供の禁止と違反の場合の取消権付与
(3)賃料の改訂において第3者の客観的査定のもと事業収支計画の事業継続が可能な範囲とする

これらを契約書に盛り込むことによって、いまの無防備な賃貸人を守り、これから、あるべき「衡平」の見地に照らした賃貸人の保護する規定の一歩となると考える。

参考:賃貸住宅管理業法
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)
令和2年10月16日公表 サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン
令和2年12月15日施行 賃貸住宅管理業法のサブリース規制措置
サブリース問題研究会
主席研究員波多江 一郎
研究員高田吉孝
江越卓真
赤澤泰三
服部順一
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